平成21年度はリバビリン(RBV)による抗C型肝炎ウイルス(HCV)作用増強機序を明らかにするためにインターフェロン(IFN)誘導遺伝子(ISG)のmRNA、蛋白発現の変化について検討を行った。 肝細胞由来であるHepG2細胞、Huh7細胞にHCV genotype 1a全長遺伝子を発現させ、IFN-α、RBVの添加を行った。経時的に細胞からmRNAと蛋白を抽出し測定を行った。HepG2細胞、Huh7細胞共に、IFN-αによるISG mRNA(PKR、MxA、OAS)の誘導がみられたが、RBVではみられなかった。HepG2細胞ではIFNとRBVの混合添加により、PKR及びMxA mRNAがIFN-α単独よりも有意に強く誘導された(day2-5)。Huh7細胞ではこのPKR、MxA mRNAの誘導増強はみられなかった。また、ISGのひとつであるIL-8mRNAはIFN-αではなくRBVによって誘導された。RBVは濃度依存的にIL-8 mRNA、蛋白の発現を増強した。また、IFN-αとRBVの混合添加によってRBV単独よりもIL-8の発現が有意に増強した。 RBVによる細胞蛋白発現の変化について解析した。PKRの活性化を反映するリン酸化PKR、eIF2-α、リン酸化eIF2-αの発現をウエスタンブロット法で比較した。HepG2細胞ではIFNとRBVの混合添加により、IFN単独に比べてPKR、eIF2-αのリン酸化が増強していた。一方、Huh7細胞ではIFN単独との差は見られなかった。 IFN-αとRBVの混合添加によりHepG2細胞ではISGの誘導がより増強していると考えられたことから、その機序として内因性IFNであるIFN-βに注目して測定を行った。HepG2細胞ではIFN-α単独に比べ、IFN-αとRBVの混合添加によりIFN-βが有意に強く誘導された。Huh7細胞では混合添加によるIFN-β誘導の増強はなかった。これらの結果より、RBVが内因性IFN-βを介してISGを誘導することで、IFN-αの抗HCV作用を相加的に増強している可能性が考えられた。 今後さらにRBVの抗HCV機序を詳細に解明することで、同様の作用をもつ新規のIFN併用薬の同定および開発、あるいはRBVに代わりうる、より副作用が少なく効果的な治療薬の開発に結びつく可能性がある。
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