研究課題
本研究では、ヒト好中球から分泌される抗菌ペプチドであるHuman Neutrophil Peptidel-3(HNPI-3)の腸管炎症への影響を解析することにより、炎症性腸疾患とくに潰瘍性大腸炎の病態の理解や新たな治療法の開発を目指した。HNP1-3は比較的低濃度では腸管上皮に対し細胞増殖作用を示すが、高濃度の条件では細胞障害作用を示した。過剰なHNPI-3は腸管上皮細胞を直接傷害している可能性がある。またHNPI-3は腸管上皮細胞のInterleukin-8(IL-8)、vascutar endothelial growth factor(VEGF)とintercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現を亢進させた。これらの結果から、HNPI-3が腸管上皮細胞に作用し上記サイトカインなどを介することで、さらなる好中球の遊走を促進させ、腸管の炎症を悪化させている可能性が示唆された。IBDモデル動物としてDSS腸炎マウスを用いた検討では、HNPI-3を投与した群はOHNPI-3非投与群と比較し体重や腸管長が減少し、腸管の病理学的活動性スコアが有意に高かった。このように、HNP1-3は腸管上皮に対しサイトカインや接着因子の発現を促し、腸管炎症に深く関わっている可能性が示唆された。また、HNP1-3を制御することで、腸管炎症を改善することができる可能性も考えられた。
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