本研究では、消化器癌幹細胞に特徴的なエピゲノムパターンを明らかにすることを目指した。初年度となる本年は、マイクロアレイおよび次世代シークエンサーを用いて大腸癌細胞におけるヒストンメチル化およびDNAメチル化をゲノムワイドに解析した。解析対象として大腸癌細胞株HCT116を用い、まずMethylated CpG Amplification (MCA)マイクロアレイ法によりゲノムワイドなDNAメチル化を解析した。次に、クロマチン免疫沈降(ChIP)法と次世代シークエンサーSOLiD3によるシークエンス解析により、ヒストンメチル化(H3K4me3)を解析した。これにより大腸癌細胞のゲノム全体のエピゲノムマップ情報が得られた。この情報を応用し、大腸癌細胞においてエピジェネティックに不活化されたmicroRNAの網羅的解析を行った。その結果、癌においてメチル化されているmicroRNA遺伝子12個を同定し得た。これらの結果よりエピゲノム解析が新規の癌関連遺伝子を同定する上で極めて有力であることが証明された。次にフローサイトメーターを用いて大腸癌細胞株のside populationを抽出した。これにより、SP細胞の癌幹細胞様性質の有無を検証すると共に、エピゲノム解析を行う準備を整えることができた。
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