本研究では、消化器癌細胞および消化器癌幹細胞に特徴的なエピゲノムパターンを明らかにすることを目指した。まずマイクロアレイおよび次世代シークエンサーを用いて大腸癌細胞における遺伝子発現、miRNA発現およびヒストンメチル化をゲノムワイドに解析した。解析対象として大腸癌細胞株HCT116を用い、クロマチン免疫沈降法(ChIP)と次世代シークエンサーSOLiD3plusを組み合わせたChIPシークエンス解析により、転写活性化のマーカーであるヒストンH3リジン4のトリメチル化(H3K4me3)およびヒストンH3リジン79のジメチル化(H3K79me2)、転写抑制のマーカーであるヒストンH3リジン27のトリメチル化(H3K27me3)を解析した。またHCT116細胞のDNAメチル化酵素ダブルノックアウト細胞(DKO細胞)を同様に解析した。得られた情報を応用して大腸癌細胞におけるmiRNA遺伝子のエピジェネティックな制御を網羅的に解析した。その結果、大腸癌細胞においてエピジェネティックに不活化されたmiRNA遺伝子37個を同定し、さらにmiR-1-1遺伝子が大腸癌において高頻度にメチル化されていることを明ちかにした(論文投稿中)。さらに、内視鏡切除された大腸癌臨床検体からEPICAMをマーカーとして大腸癌細胞を抽出し、ChIPによるヒストン修飾解析を行った。これらの解析から、大腸癌における大規模エピゲノムデータが得られ、それらの情報を癌関連遺伝子やmiRNAの同定に応用できることが示された。
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