研究概要 |
大腸癌はリスクファクターとして肥満や糖尿病などが考えられており生活習慣病としての一側面を持つ.我々はこの中でも特に内蔵脂肪がACFの数に対し有意な相関をもつことを明らかとしてきたが,近年内臓脂肪は単なる脂肪の貯蔵器官ではなく積極的にサイトカインを分泌し生体のホメオスタシスを調節していることが示唆されている.この中でアディポネクチンは内臓脂肪量と負の相関を示し,減少することで心血管系イベントが増加することが報告されているが,癌に対し抑制的に働く可能性が示唆されている.一方、糖尿病は予備軍を含めると国民の一割を超す疾患としてその根本的対策が急がれているが,インスリンおよびインスリン抵抗性は糖尿病治療の重要なターゲットとなる.現在インスリン抵抗性改善薬が臨床応用されているが,我々はアディポネクチンがAMPKを介し大腸発癌に対し抑制的に働くことを細胞,マウスモデルを用いて解明し,さらにPPARγが大腸化学発癌予防の分子標的であることを報告してきた.インスリン抵抗性改善薬pioglitazoneの1カ月の投与によりヒトにおいてACFが減少することを見出した(投稿中).同様の傾向をAMPK活性化薬であるmetforminにおいても認めている(第68回 日本癌学会学術総会,AACR 101st Annual Meeting 2010で報告した).また,アディポネクチンがヒトACFの数と逆相関することを報告した(Cancer Sci.第95回日本消化器病学会総会).肥満関連大腸発がんの分子機序としてアディポネクチンのほかIGF-1およびJNK経路の関与を見出しこれらを報告した(Gut, Int J Oncol, Mol Med Rep.)今後さらなる詳細な検討により,本邦において増加が見込まれる肥満関連大腸がんの減少を目指す.
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