本研究では、肝臓における腫瘍浸潤筋線維芽細胞のソースとして肝星細胞に注目し、癌幹細胞の自己複製能・未分化性維持機構における肝星細胞の関与を検討した。まず、肝癌細胞株における幹細胞マーカーの同定のために肝癌細胞株Huh7細胞を用いて、Side Population(SP)およびCD133、EpCAM、CD90、CD13のFACS解析を複合的に行い、既報よりもより明確な癌幹細胞マーカーの同定を検討したところ、CD133陽性SP分画が腫瘍造成能、Sphere形成能、抗癌剤耐性を示し、癌幹細胞としての性質を持つ細胞集団であった。次に、活性化肝星細胞株hTERT HSCと肝癌細胞を共培養したところ、肝癌細胞の単独培養に比べてSP分画が増加したSP細胞を単離培養すると分離培養4日でSP細胞の大部分はMP細胞に分化するが、肝星細胞との共培養によりSP細胞数が維持され、MP細胞への分化が抑制されたものと考えられた。肝星細胞との共培養によるSP分画の増加はWnt antagonist DKK-1によって阻害され、Wntシグナルが肝癌細胞のstemness維持に重要であることが示唆された。以上の検討により肝癌幹細胞のStemness維持機構に活性化肝星細胞が腫瘍ニッチとして重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、HCV subgenomic repliconを発現するHuh-FL細胞、さらにHCV-core蛋白、HCV-NS5A蛋白を発現するアデノウイルスを用いて検討を行ったところ、HCVにより癌幹細胞分画の増加を認めた。HCVによるHistone deacetylase (HDAC)活性の増加が関与しているとの知見を得ており、新規抗癌剤として注目を浴びているHDAC阻害剤を用いた治療法を検討している。以上の研究結果は、日本癌学会および米国癌学会にて発表し、現在論文投稿準備中である。
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