Wnt-5aのヒト大腸粘膜における発現は炎症性腸疾患の患者と健常コントロールの間ではmRNAで差がある傾向(炎症性腸疾患で上昇)であったが、さらなる症例の蓄積が必要であると考えられた。 また、細胞を用いた検討では、Hsp25の上皮細胞増殖への影響を明らかにした。Butyrate投与によってマウス大腸上皮細胞であるYAMC細胞の増殖活性が抑制された。この増殖活性抑制作用はYAMC細胞におけるHsp25の発現をsiRNAによって抑制することでキャンセルされたことより、Butyrateによる細胞増殖抑制は主にHsp25の発現によって制御されていることが明らかとなった。また、YAMC細胞のButyrate誘導性Hsp25はWnt-5a投与によって抑制されることが分かっているため、Wnt-5aが間接的に大腸上皮細胞の増殖をコントロールしていることが示唆され、今後さらに詳細なメカニズムの検討を予定している。また、大腸粘膜におけるWnt-5aの供給源としては既報より大腸myofibroblastであることが分かっており、マウス大腸myofibroblast細胞株を用いたWnt-5a発現制御に関する検討も同時に進めている。炎症性腸疾患におけるmyofibroblastからのWnt-5a発現がサイトカイン、ケモカインを中心とした炎症性メディエーターで制御されている可能性があり、各種刺激に対するmyofibroblastからのWnt-5a発現の制御とそのメカニズムを今後検討していく予定である。 また、Wnt-5a以外にも、大腸myofibroblastから分泌されたFGF15が大腸上皮細胞のアポトーシス抑制作用を有することも本研究で明らかになった。このFGF15の抗アポトーシス作用はカスパーゼ3の活性化を抑制する事によるものであることを明らかにした。
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