C型肝炎ウイルス(HCV)の生活環は、ウイルス蛋白質同士あるいはウイルス蛋白質が様々な宿主細胞性因子と相互作用することによって維持されている。特に、生活環において最も重要なステップの一つである粒子形成には、非構造蛋白質5A(NS5A)とコア蛋白質(Core)間の相互作用が必須であること、また、NS5A-Core間相互作用には、NS5AのC末端領域に存在するセリン残基クラスターのリン酸化が必要である可能性が示されている。本研究目的は、HCV粒子形成に重要なNS5A-Core間相互作用を制御する分子機構を明らかにすることであり、当該年度では、(1) NS5A-Core間相互作用に関わる相互作用領域の同定、(2) NS5A-Core間相互作用に関与する細胞性宿主因子の同定、(3) NS5Aのリン酸化及び粒子形成を制御するプロテインキナーゼの同定、を目指し解析を行った。(1) に関しては、HCV粒子形成に関与するNS5Aのdomain3領域のうちaa 2428、2430、2433がCoreとの相互作用に重要であることを見出した。(2) に関しては、蛋白質間相互作用をハイスループットで解析可能なAlphaScreen法を用いて、NS5A及びCoreの両者に結合親和性の高い細胞性宿主因子であるCK2α2を同定した。(3) に関しては、AlphaScreen解析及びin vitroリン酸化アッセイを施行し、NS5Aと相互作用し、NS5Aをリン酸化するプロテインキナーゼを9種類同定した。さらに、siRNAを用いたノックダウン実験により、これらの中からHCVの粒子形成過程に関与するプロテインキナーゼを3種類(CK1α、CK1ε、CK2α2)取得した。これらの同定プロテインキナーゼはHCVの粒子形成機構解明に道を拓く可能性を有するだけでなく、粒子形成過程を制御する新たな創薬標的としても期待される。
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