研究概要 |
当該研究は、ヒト膵がんの増殖を抑制するマイクロRNAの機能スクリーニング法による同定を通じて、膵がんの新規治療標的を明らかにしようとするものである。本年度は、前年度までに同定した膵がん抑制的マイクロRNAのin vitroにおける細胞増殖抑制効果をスクリーニングに用いた細胞株以外でも行い確認した。すなわち、膵がん増殖抑制的マイクロRNAとして同定したmiR-29b,miR-34a,miR-222,miR-224,miR-532は、スクリーニングに用いたMIA PaCa-2細胞株以外に、Hs 766T,BxPC-3,HPAF-II,PANC-1,Capan-1においても増殖抑制効果を有することをMTSによる細胞増殖アッセイを用いて確認した。一方で、これらマイクロRNAの膵がん細胞株における発現をリアルタイムRT-PCRによる定量を行い評価したが、その発現は一様ではなく、膵がん細胞株において必ずしも低下傾向を示していなかった。すなわち、がん細胞を用いたマイクロRNAの発現解析ではこれら膵がん抑制的マイクロRNAの同定は困難であり、マイクロRNA機能スクリーニングの有用性が示された。 これら膵がん増殖抑制的マイクロRNAを用いた治療検討のツールとして、マイクロRNA発現ウイルスベクターを作成した。すなわち、膵がん抑制的マイクロRNA前駆体をアデノウイルスベクター骨格へ挿入し、293細胞を用いてウイルス粒子を作成・精製することができた。
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