In vitro実験として正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を単層培養し、小型衝撃波発生装置を用いて照射を行ったが、照射後の血管内皮増殖因子(VEGF)の発現量増加が再現されなかった。原因として衝撃波発生装置の焦点深度幅が小さく、一層の培養細胞に確実に衝撃波が照射されていない可能性が考えられた。特殊な培養チャンバーを本学工学部と共同開発し、それを用いて照射実験を施行したが、VEGF遺伝子の発現増加は再現されなかった。単層培養系に衝撃波を照射する実験系は確立困難と判断し、コラーゲンゲル内に立体的にHUVECを培養し、ゲル内に向けて衝撃波を照射する実験系に移行した。しかし、VEGF遺伝子の発現増加が認められなかった。現状の実験系では衝撃波の効果を受けていない細胞が多すぎて、衝撃波の効果が埋没してしまっている可能性が高いと考えられた。In vivo実験として、ダール食塩感受性高血圧ラットを使用し、高塩分食を負荷し、高血圧性心肥大による心不全モデルを作成した。心不全を発症する前後の時期に体外衝撃波照射を行い、非照射群と比しその後の心機能、生存期間を解析した。照射開始後2週目において、心機能悪化の進行抑制効果を認めるものの、心機能の低下は完全には抑えられず。最終的には心機能・生存率に有意差は認められなかった。肺重量、脳性ナトリウム利尿ペプチド値なども照射群で治療が有効である傾向は認めたが有意差は得られなかった。また、照射群において心筋内毛細血管密度が有意に増加しており、衝撃波照射による心機能改善効果に血管新生が寄与している可能性が示唆された。
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