両心室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)を施行した慢性心不全症例に関して、CRT前後の心室性不整脈の発生及びその後の致死性心室性不整脈の発生を検討した。まずCRT施行前及び2週間後、6カ月後でホルター心電図を施行し、心室性期外収縮(PVC)の発生頻度を比較した(n=19)。CRT2週後、6カ月後のPVCはそれぞれ約40%、65%の減少率(P<0.05)を示し、CRTのPVC減少効果が示唆された。次いで当院でCRTを施行した59例の致死性心室性不整脈イベント(突然死または除細動機能付きデバイス(CRT-D)の作動)を検討し、MIBI心筋血流シンチ及びQGS法で検討した左室逆リモデリング効果と比較した。不整脈イベントはCRT後に左室逆リモデリングを来した症例(n=35)ではそれ以外の症例(n=24)に比べ有意に少ない傾向を認めた。すなわちCRTの慢性効果による心不全改善効果に伴い、致死性心室性不整脈の抑制効果を示すことが示唆された。MRI・心エコー及び心筋シンチの術前評価では左室壁運動の不均一運動が大きい症例がCRT後の左室逆リモデリング効果が期待される傾向を認め、結果として不整脈抑制効果を示すと考えられた。心室性不整脈の一次予防としてCRT-Dを施行された症例でも、18%(49例中9例)で心室性不整脈に伴う除細動器の作動を認めた。通常の植え込み型除細動器(ICD)一次予防の作動(23例中10例)に比べると、CRT-Dによる一次予防後の除細動器作動は少ない傾向(P=0.08)である可能性が示唆された。以上のいくつかの結果から、CRT後の左室逆リモデリングを介した心不全改善効果が心室性不整脈の改善効果において重要な役割を果たしている可能性が示唆され、CRT症例の不整脈リスクの層別化の検討が今後必要と考えられた。
|