両心室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)を施行した慢性心不全症例に関して、CRT前後の心室性不整脈の発生及びその後の致死性心室性不整脈の発生を検討した。前年度の検討ではCRT施行症例でホルター心電図による心室性期外収縮(PVC)の発生頻度がCRT後にPVCが減少する傾向を認めたが、さらに検討を加えると症例によっては心室性不整脈の増悪を認めることが明らかになった。特にCRT施行前に心室性不整脈の既往のある症例での再発が多いことが示唆され、そのような症例でのCRTの不整脈抑制効果は乏しい可能性が示唆された。 当院でCRTを施行した59例の致死性心室性不整脈イベント(突然死または除細動機能付きデバイス(CRT-D)の作動)を検討では、CRT後に左室逆リモデリング効果を伴う心不全改善症例では有意な致死性心室性不整脈の抑制効果を認めた。特に左脚ブロック型wide QRS(140msec以上)症例では80%で左室逆リモデリングを認め、致死性不整脈イベントは有意(P=0.04)に少ない傾向を認めた。その一方で、一次予防症例の18%で心室性不整脈に伴う除細動器の作動を認め、CRT植え込みが必ずしも長期的な突然死予防に結び付かない可能性も示唆された。当院の初期の除細動器無しにCRT施行例でも3例で突然死を認めており、現時点ではCRT適応に於いて除細動器付きデバイス(CRT-D)を第1選択とすべきと思われた。しかしながら、左脚ブロックwide QRS症例でCRT後に左室逆リモデリングを来すことが期待される症例ではCRT後の致死性不整脈が抑制されることが期待されるため、除細動無しのCRT選択も検討すべきだが、さらなる検討と検証が必要であると思われた。
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