研究概要 |
虚血性疾患の患者本人の末梢血から虚血改善能・治療効果の高い血管内皮前駆細胞(EPC)を採取・増幅し、治療に用いることを目的として下記研究を行った。 虚血性疾患に対しては骨髄・末梢血よりCD34陽性細胞を分離して虚血部位に注入する方法が臨床応用されているが、疾患によっては画期的な効果は上がっていないのが現状である。すなわち、CD34に代わるEPC単離方法の確立が必要である。研究代表者は、CD34に代わるマーカーとしてAldehyde dehydrogenase(ALDH)活性に着目し、ヒト臍帯血由来EPCから虚血改善能の高い細胞群を抽出することに成功した(Nagano et al., 2007 Blood)。この知見を基に、患者本人から虚血改善能の高いEPCを単離し、EPCの自家移植に向けた解析を行った。 閉塞性動脈硬化症の患者2例より、インフォームド・コンセントを得て末梢血を採取した。活性の高いEPCに多く発現し虚血改善に関与していると予想される因子CXCR4に対して、shRNAを用いて発現を抑制したところ虚血改善能が大幅に抑制された。一方、活性の低いEPCにCXCR4を強制発現させると、限定的ではあるが虚血改善能が改善した。これにより、CXCR4が虚血改善能に重要であることが示唆された。また、活性の低いEPCにCXCR4を強制発現させたときの虚血改善効果が、活性の高いEPCと比較して十分ではなかった。このことから、虚血改善にはCXCR4による作用に加えて他の因子(もしくは因子群)が関与していることが推測された。 現在、虚血性疾患の患者由来EPCをALDH活性により2群に分離・採取し、機能の異なるEPCにおける遺伝子発現解析を網羅的に行っている。ここから得られる結果を基に、発現において大きく異なるサイトカイン・増殖因子・ケモカイン等について解析を行うことを予定している。
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