本研究では血管内皮細胞内外に生じるVESICLE構造の発生、動態、分子との関わり、臨床的な病態との関わりについての検討をすすめるものである。その検討には細胞内外でのVESICLEの産生や動態の観察、VESICLEの分離及び解析、さらにはVESICLE負荷に対する細胞や生体の影響の検討が含まれる。 21年度に関しては内皮細胞内で生じるVESICLE構造の生理的意義、mechanismについての検討を行った。まず我々は培養内皮細胞へのfree cholesterol負荷によってLipid raft様domainを伴ったVESICLE形成が生じることを確認したが、これば電子顕微鏡及び免疫染色などからmultivesicular bodyやlysosomeなどのlate endosomeによるVESICLE構造であることが判明した。同時にその周囲はFree Cholesterolを豊富に含んだ二重膜であり、さらにCaveolinやSrcなどのLipid Raft関連蛋白によって囲まれており、細胞膜Lipid Raft同様の細胞内のdomainであることを確認した。このVESCILEの形成はstatinの前投与によって抑制され、small GTPaseの関与によって調節を受けていることが示唆された。さらにある条件のもとでこのVESICLE周囲にeNOSが集ぞくし、それに伴いeNOSのbioavailabilityが低下することが確認され、VESICLE構造と内皮機能障害との関連が示唆された。また動脈硬化モデルのマウスの電子顕微鏡像において同様のVESICLE構造の存在を確認した。今後は細胞内のVESICLE構造に限らず細胞外に産生されるVESICLE構造について検討をすすめていく。
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