平成21年度に、われわれはSMα-actin-EGFPレポーターマウス骨髄を野生型に移植した骨髄置換(キメラ)マウスに対し血管病変形成を誘導し、病変を含む血管組織を採取、細胞を単離した上でフローサイトメトリーを用いGFP発現細胞(=SMα-actin陽性細胞)を分離、フローサイトメトリーを用いて詳細な表面マーカー発現・機能(遊走能、増殖能などの解析を行った結果、血管病変に集簇する骨髄由来SMα-actin陽性細胞は、マクロファージ、あるいは単球の形質を有しながら、SMα-actinも同時に発現していることが明らかとなった。特にマクロファージのサブタイプの中でも炎症を促進すると考えられるM1マクロファージの形質を強く発現していることが示された。それらを勘案すると、血管病変において観察される骨髄由来SMα-actin陽性細胞は、これまでに腎臓・肺で繊維化などの臓器リモデリングに寄与すると報告されたcirculating fibrocytesと大きな相同性を有することが示唆され、同細胞の詳細な解析は動脈硬化のみならず、さまざまな臓器リモデリングの解明に極めて有用である可能性が考えられた。さらに、平成21年度にわれわれは、SMα-actinプロモーターによってヒトジフテリア毒素受容体を発現するトランスジェニックマウスの作成に成功し、そのマウスを用い、骨髄由来SMα-actin陽性細胞を選択的に除去することでそれらの動脈病変形成に対する寄与を詳細に・明確に解析することが可能となった。さらに血管内皮側からの持続的・物理的血管障害により大動脈リモデリング(大動脈瘤形成・大動脈解離など)を発症する全く新たなマウスモデルも確立(釣り糸モデル)し、大動脈リモデリングに関するメカニズムの解析を開始した。
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