これまでに、SMα-actin-EGFPレポーターマウス骨髄を野生型に移植した骨髄置換(キメラ)マウスに対し血管病変形成を誘導し、病変を含む血管組織を採取、細胞を単離した上で表面マーカー発現・機能(遊走能、増殖能などの解析を行った結果、血管病変に集簇する骨髄由来SMα-actin陽性細胞は、マクロファージ、あるいは単球の形質を有しながら、血管平滑筋細胞や線維芽細胞に発現するSMα-actinも同時に発現していることが明らかとなった。特にマクロファージのサブタイプの中でも炎症を促進すると考えられるM1マクロファージの形質を強く発現していることが示されたたことから、血管病変において観察される骨髄由来SMα-actin陽性細胞は、さまざまな臓器で繊維化などの臓器リモデリングに寄与するとされるcirculating fibrocytesと相同性を有することが示唆された。次にM1マクロファージに強く発現する表面マーカーCD11bとLy-6cを発現しているSMα-actin-EGFPレポーターマウスの骨髄細胞をソーティングし、血管障害モデルマウス末梢血に混入したところ、障害血管の新生内膜のみならず中膜や外膜にもGFP陽性細胞の集簇を認めたため、動脈硬化に代表される血管リモデリングにはSMα-actinを発現しながら骨髄由来の主にM1マクロファージの形質を有する平滑筋"様"細胞が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 また、血管内皮側からの持続的・物理的血管障害により大動脈リモデリングを発症する新たなマウスモデルを用いて大動脈リモデリングのメカニズムを解析したところ、障害に対して急性期に局所で放出される物質、TNFαが大動脈破裂に対し重要な防御的役割を担っていることが明らかとなった。 さらに、臨床的には急性心筋梗塞症例の冠動脈から吸引された血栓を病理学的に解析したところ、浸潤した細胞には骨髄由来未分化細胞が含まれており、その比率が続発する再狭窄の比率と密接な関係があることが明らかとなった。
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