心不全はあらゆる心疾患の終末像として出現する頻度の高い病態であり、高血圧性心疾患や虚血性心疾患など、生活習慣病が原因となり発症する。高齢化社会の進行に伴い今後も罹患患者数が増加しつづけることが予想されていることを考えると、新たな治療戦略の開発基盤として心不全の発症メカニズムを解析することは現代医療に科せられた最重要課題の一つである。高血圧が持続すると心臓は肥大し、間質の線維化が生じ、心臓のコンプライアンスは低下し心機能は低下する。。心不全の進展に重要な働きをしているAngIIをマウスに負荷すると、心臓は線維化を起こすが、その過程で、CD45陽性の骨髄由来の細胞が線維化巣に集簇していることを見いだした。近年、骨髄由来のFibrocyteと呼ばれる細胞集団が存在し、線維化に関わっていることが報告されている。AngIIにより誘導される心臓の線維化においてもこのようなFibrocyteの線維化巣への遊走が重要であり、心臓における炎症が線維化を惹起することが示唆された。また、自然免疫系でインターフェロンなどの誘導に重要な働きを有しているInterferon regulatory factor 3を欠損したマウスでは、AngII刺激により間葉系の線維芽細胞が誘導するケモカインの産生が低下しており、Fibrocyteの遊走、心臓の線維化が減弱していることが明らかとなった。また、AngII刺激によりInterferon regulatory factor 3が直接活性化さることも明らかとなった。
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