研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、主として血管から産生される多彩な生理活性を有するペプチドである。AMと、その一連のファミリー因子は、同一の受容体CRLRと、これに重合する複数の受容体活性調節タンパク(RAMP)が存在し、CRLRとRAMPの組み合わせにより、リガンド特異性が調整され、AMの多彩な生理作用を生み出していると考えられている。我々は、AMホモノックアウトマウス(AM-/-)が胎生致死となる胎生中期の血管において、特にRAMP2の高発現を認めることから、血管におけるAMシグナルの中心は、RAMP2によって担われている可能性を考え、RAMP2ノックアウトマウス(RAMP2-/-)を樹立した。RAMP2-/-は、AM-/-同様の血管の発達異常により、胎生中期(E13.5-14.5)に致死であった。本年度の研究では、成体が得られるRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)を用い、カフを大腿動脈周囲留置することで、血管傷害モデルを作成し、動脈硬化病変の評価を行った。RAMP2+/-では、新生内膜の形成、平滑筋増殖、炎症細胞浸潤、細胞外マトリックスの増生が亢進しており、動脈硬化病変の増悪が認められた。更に、RAMP2+/-では、動脈硬化病変部に、ICAM-1,VCAM-1,MCP-1などの発現亢進を認め、傷害部位に強い炎症反応が惹起されていることが示された。またRAMP2+/-では、PCNAの強発現を認め、平滑筋増殖が亢進していることが示唆された。更にRAMP2+/-では、病変部における酸化ストレスレベルの亢進とNADPHオキシダーゼの強発現を認めた。以上の結果は、成体においても、AMによる血管保護作用がRAMP2によって制御されていることを示すものであり、RAMP2は、新たな治療標的分子として期待される。
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Peptides
巻: 31 ページ: 865-871
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