急性ストレス下の心筋細胞オートファジーの病態生理・分子機構の解明 ○飢餓ストレス応答 心疾患への治療応用に先立ち急性ストレス下の心筋細胞オートファジーの病態生理、分子機構について検討した。 急性ストレスとしてまずオートファジー誘導としてよく知られた飢餓ストレスについて検討した。絶食12時間にて早くも心筋内でリソソームの活性化がみられ、その後のオートファゴゾームへの形態変化を超微形態にて確認しLC-3やcathepsinDなどオートファジーマーカーの亢進も確認した。飢餓により心機能が低下することはなかったが、Bafilomycin A1を用いてオートファジーを抑制したところ心機能が低下し心筋組織のアミノ酸・ATP低下を認めた。このことから心筋は飢餓ストレスに代償性にオートファジーを亢進させ細胞内ATP産生をすることで心機能維持したと考えられた。 ○急性虚血ストレス応答 虚血は組織飢餓のひとつでありオートファジーの関与が想定されるためマウス急性心筋梗塞モデルを用い急性虚血におけるオートファジーの動態と役割を検討した。オートファジーは結紮後急性期には心室全体で亢進し、次第に梗塞境界領域に限局して亢進することを確認した。さらにオートファジーの役割を検討するため心筋梗塞前にBafilomycinA1を投与しオートファジーを抑制した群とrapamycinを投与しオートファジーを促進した群、心筋梗塞前に絶食状態としオートファジーを促進させた上で心筋梗塞とした群を作成し梗塞2日後に評価した。オートファジー抑制群はコントロール群と比較し有意に梗塞サイズは拡大したがオートファジー促進群は有意に縮小した。さらにin vitroでマウス幼若心筋細胞にATG5、LAMP-2のsiRNAを導入することでオートファジーを特異的に阻害し虚血状態をシュミレーションしたところコントロールと比較し細胞の生存率は有意に低下した。以上よりオートファジーは虚血に対し保護的に作用し、虚血細胞死を抑制することで心筋梗塞サイズを縮小させたと考えられた。
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