○慢性心不全における心筋細胞オートファジー 平成21年度までの研究により急性虚血ストレス化での心筋オートファジーはエネルギー産生を介した細胞の生存への代償機構と考えられた。そこで平成22年度はマウス大型心筋梗塞モデルを作成し慢性心不全状態での心筋オートファジーを検討した。心筋梗塞後亜急性期には心筋全体でオートファジーが亢進し、特に梗塞境界領域の心筋は巨大な空泡変性が目立ちオートファジーが亢進していた。慢性期へ移行すると境界領域のオートファジー亢進は低下し逆に梗塞遠隔領域での亢進を認めた。さらに心筋オートファジーの役割を検討するため、心筋梗塞後3週より7日間bafilomycin Aを投与しオートファジーを阻害した群、rapamycinを投与しオートファジーを促進した群を作成した。心エコー、心カテーテル法による心機能評価ではrapamycin投与により左室の縮小、収縮能・拡張能の改善を認め、ANPの発現も抑制されていた。これらの心筋ではautophagic vacuoleの増加しやLC3は強く発現しておりオートファジーの亢進が確認された。一方、bafilomycin Alの投与により左室は拡大し心機能の低下を認め、心筋ではオートファジーの抑制を認めた。心筋のエネルギー状態に注目しAMPKを評価したところ心筋梗塞による慢性心不全状態でリン酸化は亢進していた。rapamycinにより抑制され、bafilomycin Alにより亢進していた。以上より心筋オートファジーは心筋梗塞後慢性心不全においてエネルギー産生を代償的に亢進し左室リモデリングを抑制し心機能・心不全を改善していることが示唆された。
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