本研究の目的は、拡張型心筋症、肥大型心筋症の病態解明を目指し、これまで蓄積してきた心筋細胞内Ca^<2+>関連蛋白mRNAレベルの測定に加え、新たに蛋白レベルでの定量評価を行うことであった。実際の機能の担い手である蛋白レベルでの定量評価は重要であると考え、本研究計画を立案した。研究実施計画に基づき、平成21年度は、拡張型心筋症および肥大型心筋症の臨床における生理学的データ、血液生化学データ、心筋生検サンプルの収集にあたるとともに、各疾患の病態形成に関連する心筋細胞内Ca^<2+>関連蛋白のmRNAレベルと蛋白発現の両者を同定した。本研究を効率的に遂行するため、臨床部門、基礎部門に各々チームをつくり、専門的に各部門において実行した。平成22年度は、蓄積した各部門のデータベースを統合して統計解析を行い、発表・投稿した。平成22年度は、ドブタミン交互脈が予後予測に有用であることを報告し、(Hirashiki A et al. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2010 ; 37:1004-1009.)、糖尿病を合併した拡張型心筋症は、心筋線維化が強く、弛緩能が低下しており、ミトコンドリア形態異常も認め、予後不良であったことを報告し、(Sakakibara et al. Diabetes Res Clinic Prac. 2011 in press)1 CPXによる運動耐容能の評価とドブタミン負荷による心機能評価との関連について報告した。(Okumura et al. Internal Journal of Cardiol. 2011 in press)これらの研究成果は、心筋症における線維化、心筋予備能、の病態解明につながり、心不全の進展予防として重要な意義をもつ結果である。
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