我々は心臓での興奮収縮連関に影響を与えていると考えられているsoricnのノックアウトマウス(SOKO)を作成し、sorcinの生体内での検討を行った。 SOKOはメンデルの法則に従い誕生し、正常に発育し、外見上は大きな異常は認めなかった。 Ryanodine receptor、SERCA2a、phospholamban(PLN)の蛋白質発現、PLNのリン酸化の程度に差を認めなかった。Hematoxylin-Eosin染色やAzan-Mallory染色を用いた組織学的検討では線維化を含む異常は認めなかった。心筋横断面積は野生型マウス(WT)で同等であり、心筋細胞肥大は認めなかった。また、体重で補正した心重量、左室重量は両群で差を認めなかった。 これらの事より、sorcinのノックダウンは心肥大や心筋の線維化には影響を与えない事が明らかとなった。 心臓超音波法を用いた検討では、左室拡張末期径、収縮末期径、左室短縮率、左室壁厚に両群で差を認めなかった。 心機能を更に検討を行うため、観血的に左室内の圧を計測した。左室収縮期圧、左室拡張末期圧、収縮能の指標であるdp/dt max、拡張の指標であるdp/dt min、いずれの指標も両群間で差を認めなかった。 次に、マウス成獣単離心筋細胞を用い、心筋のカルシウム動態の検討を行った。最大カルシウムトランジェントとカルシウムトランジェントがPeak Caの3/4から1/4に達する時間であるDecay timeに両群で有意差は認めなかった。以上より、sorcinのノックダウンはマウスの定状状態における心機能、カルシウム動態には影響を与えていないことが明らかとなった。
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