我々は心臓での興奮収縮連関に影響を与えていると考えられているsoricnのノックアウトマウス(SOKO)を作成し、sorcinの生体内での検討を行った。SOKOはメンデルの法則に従い誕生し、正常に発育し、外見上は大きな異常は認めず、定常状態では、心臓超音波法やカテーテル法で測定した心機能は野生型マウス(WT)と相違なかった。 マウス横行大動脈(TAC)を縮窄した圧負荷心では、心肥大期にsoricinの発現が上昇する。そこでSOKOに対し、TACを施行した。TAC施行後1週間の心エコーでは、WT、SOKO共にsham手術群に比しTAC群は有意な壁厚の増大を認めたが、WT TAC群、SOKO TAC群間でその程度に差を認めなかった。また、WT TAC群、SOKO TAC群共に心拡大や心機能の低下を認めなかった。体重で補正した心重量、左室重量はsham手術群に比し、TAC手術群で増大を認めるものの、WT TAC、SOKO TAC両群で有意差を認めなかった。 Hematoxylin-Eosin染色やAzan-Mallory染色を用いた組織学的検討では、SOKO TAC群はWT TAC群に比し有意な線維化の亢進や、心筋細胞肥大は認めなかった。心肥大期の心筋を単離し、心筋のカルシウム動態の検討を行った。最大カルシウムトランジェントとカルシウムトランジェントがPeak Caの3/4から1/4に達する時間であるDecay timeに両群で有意差は認めなかった。 以上より、sorcinのノックダウンはマウスの定状状態だけでなく、病的肥大期においても心機能、カルシウム動態には影響を与えていないことが明らかとなった。
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