これまでの研究(H19-20文部科学研究費若手研究スタートアップ)で申請者は、圧負荷モデルにおいて心機能低下が生じる前から食塩摂取により交感神経活動亢進が生じること、また脳室内への高Na人工脳脊髄液投与による血圧・心拍数増加反応が増強することを確認した(Circ Res 2009)。以上より、圧負荷モデルにおいては、脳内Naハンドリングの異常が生じていることが示唆された。そこで、本研究ではNaハンドリング異常の機序として、脳内ミネラルコルチコイドレセプター(MR)と上皮型Naチャネル(ENaC)に注目した。腹部大動脈Bandingで圧負荷モデルを作成。4週間後の時点(AB4群)では、軽度の壁肥厚(LVH)を認めるものの、左室収縮能の低下は認めないモデルであるあり、上記の食塩感受性を獲得していることが確認されている。本モデル(AB4群)を用いて、sham手術群と脳室周囲組織のおけるMR/ENaCの発現を比較した。その結果、AB4群おいて有意にMRおよびαENaCの発現増加を認めた。このαENaCの発現増加および食塩摂取による交感神経活動亢進は、Banding作成と同時にMRブロッカー(エプレレノン)を脳室内に持続投与することで有意に抑制された。また、長期(4週間)食塩負荷後においても、脳内MRの発現の増加および交感神経活動亢進は持続し、心機能の著明な低下を来たすことを確認した。そこで、AB4群への長期食塩負荷と同時に脳室内へMRブロッカー持続投与を行い、交感神経活動亢進および心機能低下へ及ぼす効果を検討した。その結果、交感神経活動亢進の有意な抑制を生じ、心機能低下も抑制された。以上、今年度の研究で、圧負荷モデルにおける脳内Na感受性獲得機構として、脳内MR-ENaC経路の亢進が関与することを明らかにした。
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