研究概要 |
治療因子を封入した生体吸収性PLGAナノ粒子を作製し、スクリーニングすることにより最適なナノ粒子製剤を探索研究した。具体的には異なる処方で作製したナノ粒子の平滑筋増殖抑制、内皮細胞再生促進効果を培養細胞レベルで検証した。ナノ粒子は短時間内に高率に導入され、細胞質内に安定して長期間(7日間以上)停留すること、ナノ粒子製剤化していない薬剤と比較し細胞内DDSにより長期間に渡り有効性が持続することをすでに明らかにしている(Kimura S, Nakano K et al. Circulation. 2008 ; 118 : S65-S70)。このようなナノ粒子の細胞内DDS機能を利用すれば、低濃度の治療因子によって血管細胞機能を制御できると考えられる。細胞増殖には影響しない低濃度(0.1μM以下)の薬剤をナノ粒子を用いて細胞内に送達すると、同じ濃度の薬剤に比べより優れた細胞増殖抑制効果(細胞内DDS効果)が得られることを明らかにした。つぎに、高流量のインフュージョンシステムを用いてナノ粒子を傷害血管壁内に送達し、その局在と時間経過を検討した。疾患モデルとして高脂血症ウサギバルーン傷害モデルを用いた。間欠式パルスインフュージョンカテーテルシステムを用いて蛍光マーカーであるFITCを封入したナノ粒子をウサギ頚動脈に投与するとナノ粒子が血管壁に効率的に送達されることを明らかにした。さらに、臨床への橋渡し研究を鑑み、ヒト冠動脈と最も類似しているとされるブタ冠動脈を用いて同様にFITC封入ナノ粒子を投与したところ、最大で28日間までDDSされることが明らかになった。次いで、本ダブルDDSを用いてブタ冠動脈内に治療因子を封入したナノ粒子をバルーン傷害部位へ送達させたところ、対照群に比べ有意に新生内膜形成が抑制効果されることが明らかになった。
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