研究課題
若手研究(B)
本研究では、1)ミトコンドリアDNAのコピー数の制御が重要であるのか否かについて明らかにし、2)ミトコンドリアDNAのコピー数の変化が細胞内ストレスに対してどのようなネットワークで核への情報伝達が可能となるのか、さらには、3)ミトコンドリアDNA を後天的に増加させる方法の確立を目的とした。まず、ミトコンドリアDNAコピー数の制御が重要であることの証明のために、Twinkle過剰発現マウスを用いて、リモデリング抑制されているかどうかを検証した。ミトコンドリアDNAヘリカーゼであるTwinkleの過剰発現により、心筋梗塞後のリモデリングが抑制され、TFAM過剰発現と同様に心筋梗塞後生存率が著しく改善した。しかし、これらのマウス心筋のミトコンドリアDNAの転写、および複製はTFAMマウスで抑制されていたのに対し、Twinkleマウスでは、転写複製が増加していることが明らかとなった。これらの結果から、心筋の抗リモデリング作用に関しているのは、ミトコンドリアDNAの量であることが示された。さらに申請者は、ラット心筋細胞にリコンビナントTfamを投与することで、直接細胞内特にミトコンドリアに取り込まれ、その結果、ミトコンドリアDNAが増加することを明らかにした。一方、アンジオテンシンIIおよびエンドセリン-1の刺激に対するNFATの活性化の測定系によって、肥大シグナルを仔ラット心筋細胞に付加することにより、NFATが活性化すること、TFAM導入によりミトコンドリアDNAを増加(~1.8倍)した状態では、これらのNFAT活性化がほぼ完全に抑制され、その下流であるMCIP の発現も低下、さらにファロイジン染色により細胞肥大も抑制されることが示された。以上の結果から、TFAM導入によるミトコンドリアDNAの増加は、肥大シグナルに対するNFATの活性化を抑制することで抗リモデリング効果を発揮していることが明らかとなり、リコンビナントTFAMは今後新たな心不全治療手段として可能性を有することが示唆された。
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