研究課題
平成22年度は、in vitroにおいて培養マクロファージ(RAW264.7細胞)にマウスキチナーゼmiR RNAi発現プラスミドを遺伝子導入しキチナーゼ特異的阻害による作用を検討し、in vivoにおいてApoE欠損マウスにキチナーゼ阻害剤アロサミジンを投与しキチナーゼの動脈硬化における役割を検討した。<キチナーゼ過剰発現・抑制によるマクロファージ機能への影響の検討>では、アロサミジン処置とキチナーゼ遺伝子導入による(a)マクロファージの遊走能、(b)コレステロール代謝の結果に一致をみていなかったが、miR RNAiによるキチナーゼの特異的阻害でも確定的な結果を得られなかった。(c)動脈硬化関連サイトカインの発現に関しては、アロサミジン処置、キチナーゼ遺伝子導入の結果と一致して、miR RNAiによるキチナーゼの特異的阻害により炎症性サイトカインMCP-1、TNF-α発現は増加し、その他のサイトカインに有意な変化を認めなかった。<ApoE欠損マウスの動脈硬化の発生・進展におけるキチナーゼの役割の検討>では、ApoE欠損マウスに浸透圧ポンプを用いて対照液またはアロサミジン(1mg/kg/日)投与を行い、西洋食(21%脂肪、0.15%コレステロール)負荷6週間後に動脈硬化の評価を行った。経過中、2群間の体重、血圧、脈拍、総コレステロール値、中性脂肪値に有意差は認められなかった。また、アロサミジン投与によりキチナーゼ活性は約40%抑制された。動脈硬化の解析では大動脈弓部における動脈硬化は有意に増加し(約1.6倍)、下行大動脈の動脈硬化については有意差を認めなかった。大動脈基部の動脈硬化、性状に関しては現在解析中であるが、以上の結果からキチナーゼは炎症を抑制することにより抗動脈硬化に働くと考えられ、キチナーゼは動脈硬化の新たな治療標的となりうる可能性が示唆された。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLoS One.
巻: 15 ページ: e13973