研究概要 |
平成21-23年度の研究実施計画に基づき、心不全に合併する睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニングを合計300件程度行い、内約7割程度にSASの合併を認めた。下記について明らかにした。 1.SASの一種であるチェーン・ストークス呼吸の重症度とMIBG心筋シンチ(Wash out rate)に相関を認め、チェーン・ストークス呼吸は交感神経活性と密接に関与する(欧州心臓病学会2009年発表)。 2.SASにより血管内皮機能が低下する(Fukushima J Med Sci 56:115-120,2010)。 3.チェーン・ストークス呼吸合併心不全患者に対して、呼吸補助療法であるAdaptive servo ventilation (ASV)療法を日中に行うと、肺うっ血は軽減し、心拍出量が増加する(欧州心臓病学会2011年発表)。また夜間のASVの使用にて、心負荷指標であるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心筋障害指標であるトロポニンT、交感神経活性指標であるカテコラミンの減少効果を認めた(日本循環器学会2011年発表)。腎機能指標であるシスタチンCの減少効果を認めた(アメリカ心臓病学会2011年発表)。さらに、ASV長期使用にて、心機能及び心不全予後が改善することを世界ではじめて明らかにした(アメリカ心臓病学会2010年発表Int Heart J 52:218-223 2011)。 4.重症心不全治療で近年重要なオプションである心臓再同期療法(CRT)の効果も心機能、予後改善について未だ十分ではないが、CRT後のASV追加にてさらに心機能び予後改善(再入院減少)効果を認めた(アメリカ心臓病学会2011年発表、J Cardiol 2012 in press)。 5.体表面インピーダンス法による心拍出測定(ミハマメディカル社製BioZ使用)を併用し、心不全患者におけるASVによる心拍出量及び肺含水量の変化を検討中であるが、ASVにて心拍出量の増加を来たす例とそうでない例を認めている(日本循環器学会2012年発表)。 なお、上記結果については、国内外の学会などにて随時公表中であり、本年度学術誌へ2篇掲載済み、その他の結果についても学術誌への投稿中である。
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