虚血性心疾患や癌をはじめ様々な病態において血管新生の役割が解明されるとともに、基盤となる血管形成に関する研究が重要性を帯びてくる。転写調節因子であるHrt1/Hrt2の遺伝子変異マウスの解析から、個体発生において血管内皮細胞のHrt1/Hrt2機能が必須であることが明らかにされている。一方、様々な成人疾患における血管新生の病的意義が注目されていることから、成体におけるHrtの機能解析は重要であると考えられるが、Hrt1/Hrt2ダブルノックアウト(KO)マウスが胎生致死であることから成体におけるHrtの機能は不明のままである。以上のことから、成体の血管内皮細胞におけるHrtの病的意義の解明を試みた。(1)最初に、野生型マウスにおける下肢動脈結紮モデルの作成を行ったところ、大腿筋におけるHrt1mRNAの発現上昇が確認されたが、一方Hrt2発現は検出されなかった。(2)Hrt1^<ko/ko>マウスを用いて、下肢動脈結紮モデルの作成と解析を行った。Laser Dopplerによる血流量測定の結果、術後の血流回復が有為に抑制された。以上のことから、Hrt1遺伝子は血管新生に重要な機能を有していることが示唆された。そこで、(3)血管内皮細胞のどのような細胞機能にHrt1欠損が影響を与えるのかを明らかにするため、FACS sorterを用いて肺から内皮細胞の分離を試みた。これまでのところ、内皮細胞の分離条件が確立出来たことから、引き続きHrt1^<ko/ko>内皮細胞の増殖・管腔形成・移動について詳細に解析を行っている。
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