顆粒球特異的にインスリン抵抗性が動脈硬化に与える影響を検討した。マウスの単球にはIRS-1は存在しないため、野生型マウスとIRS-2欠損マウスの骨髄を10Gyの放射線照射後の野生型マウスに移植を行い、顆粒球特異的なインスリン抵抗性マウスとコントロールマウスを作成した。移植16週後に腹腔内グルコース負荷試験とインスリン負荷試験により耐糖能とインスリン感受性を評価したところ、両群間に有意な差はなかった。このような状態で、大動脈内皮細胞への単球の接着や大動脈弁存在領域の切片におけるマクロファージを免疫染色にて評価したところ顆粒球特異的なインスリン抵抗性モデルで有意に増加していた。また、腹腔内マクロファージを抽出して炎症性サイトカインの発現をRT-PCRで検討した。コントロールに比較して、顆粒球特異的IRS-2欠損マウスでは炎症性サイトカインの発現が有意に増加していた。次に、マクロファージにおけるインスリン抵抗性の役割を明らかにするため、野生型マウスの腹腔内マクロファージを用いて検討した。腹腔内マクロファージに対して生理的濃度のインスリンを前投与後、LPSで刺激した場合、LPSで誘導される炎症性サイトカインの発現は有意に抑制された。この作用はインスリンシグナルの下流に存在するPI3KやERK阻害剤により減弱したため、インスリンシグナルが重要であると考えられた。また、IRS-2欠損マウスの腹腔内マクロファージではインスリンによる抗炎症作用は認められないためインスリン/IRS-2を介したシグナルが重要であることを確認した
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