研究課題
心臓由来Sca-1陽性細胞シートを心筋梗塞マウスに移植することにより心機能が改善することが明らかになっているが、その詳細な機序は明らかになっていない。そこで今回我々はSca-1陽性細胞の心筋分化能および移植細胞の分泌する増殖因子を介したパラクリン効果について検討を行った。Sca-1陽性は、移植4週目には移植直後に比し約2割の細胞の生着が確認された。また生着したSca-1陽性細胞の約3割が心筋細胞特異的蛋白を発現していることが確認された。次にSca-1陽性細胞の分泌蛋白について検討を行った。細胞シート移植の対照として用いた脂肪間葉系細胞では、梗塞後心機能改善効果を認めなかったことから、Sca-1陽性と脂肪間葉系細胞の培養上清を回収し、サイトカイン抗体アレイを行ったところ、Sca-1陽性においては可溶性VCAM-1の発現が多いことが観察され、ELISA、western blotにおいてもその発現の差異が確認された。次にSca-1陽性細胞培養上清の機能について検討を行った。Sca-1陽性細胞培養上清は、血管内皮細胞の管腔形成を促進した。一方Sca-1陽性細胞にVCAM-1特異的miRNAを遺伝子導入し、再度培養上清を回収し血管内皮細胞の管腔形成は抑制されたことから、Sca-1細胞培養上清は分泌するVCAM-1を介して血管新生促進効果を有することが明らかとなった。次に心筋保護効果について検討した。過酸化水素で処理を行った新生仔ラット心筋細胞にSca-1陽性細胞培養上清を添加することにより、心筋細胞のviabilityが改善した。この効果はVCAM-1のknock downにより減弱し、またVCAM-1の受容体であるVLA-4の中和抗体添加により抑制されたことから、Sca-1陽性細胞は、自身の分泌するVCAM-1およびVLA-4を介した機序により心筋保護効果を示すことが明らかとなった。
すべて 2009
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