・ 本研究はマクロファージから分泌されるRELMβの引き起こすinnate immune反応が、粥状動脈硬化の形成に重要である、という仮説を検証する目的である。そのためRELMβ欠損マウス(RELMβnull-ES cell、背景129/B16)を入手した。マウスは通常動脈硬化抵抗性でC57/B16が最も動脈硬化が誘発されやすく、また動脈硬化モデルマウスのApoE欠損マウスの背景がC57/B16なので、スピードコンジェニック法(マイクロサテライトを用いてC57/B16に近い個体を選別し、顕微授精により早期から精子を交配に供した)によりC57/B16コンジェニック化RELMβ欠損マウス作出した。さらに、動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損との二重欠損マウスを作出できた。 ・ 大血管microarrayと細胞内シグナル伝達解析:上行~胸部大動脈を摘出してmRNAを抽出、microarrayによって血管壁に生じる変化を網羅的に解析を行っている。解析では、KeyMolnet(IMMD社)を用い、炎症反応をはじめとした血管病変の形成にRELMβがかかわることが示唆された。また形態的変化については、動脈硬化性病変におけるマクロファージの集族化、泡沫化が抑制されたていた。今後はLPSや動脈硬化誘発食に対するRELMβKOによる反応性の違いを解析する。 ・ 腹腔マクロファージex vivo/in vitro解析:RELMβ欠損マウスでは野生型の腹腔マクロファージに比べ炎症性サイトカインの分泌が抑制されていた。今後は泡沫化などの機能解析を行う。 ・ 本研究の継続、発展によって、RELMβが動脈硬化の発症進展に関して、マクロファージからの分泌で動脈硬化を直接的に進行させるという全く新規な病態を明らかにできると考えている。
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