近年、虚血性心疾患、脳梗塞、あるいは末梢動脈閉塞といった虚血性疾患に対し、従来の内科・外科的治療に加え血管再生療法が臨床応用されつつある。特に末梢血において血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell : EPC)が発見されて以降、その細胞移植による虚血改善効果が報告されている。喫煙や糖尿病、加齢と共に血中EPCは減少するという報告は、動脈硬化疾患患者由来EPCを用いた細胞移植は、細胞の質的・量的問題により虚血改善効果に限界があると想像される。本研究は加齢、リスクファクター等により機能低下に至った骨髄由来EPCの代替として、多能性幹細胞由来血管前駆細胞(VPC)を骨髄あるいはそれに代わる部位に移植することで、虚血・動脈硬化部位に血管再生作用をもったVPCを恒常的に供給するシステムを確立し、虚血性・動脈硬化性疾患の根本的治療を目指すことをその目的としている。そこで、平成21年度は、慶應義塾大学との共同研究により、ヒトES細胞からVPCおよび血管内皮や平滑筋細胞といった血管構成細胞に至る各分化段階由来の細胞において、マイクロアレイを用いた多能性幹細胞由来中胚葉細胞から血管構成細胞に至る発生系統的遺伝子発現プロファイル解析を行った。このプロファイルデータに加え、これまで既報のマウスES細胞を用いた同様の検討と比較し、骨髄血管構成前駆細胞の代わる生着性に優れた多能性幹細胞由来血管前駆細胞の同定を目指した候補表面抗原マーカーを絞り込み、これらの各分化過程における経時的な発現変化を経時的に解析した。
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