研究課題
(1)多能性幹細胞由来中胚葉細胞から血管構成細胞に至る発生系統的遺伝子およびマイクロRNA(miRNA)発現プロファイル解析慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科との共同研究により、ヒトES細胞から血管内皮や平滑筋細胞といった血管構成細胞に至る各分化段階由来の細胞において、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子およびマイクロRNA(miRNA)発現プロファイリングを構築した。このプロファイリングには、成人由来各種血管細胞のデータを加えて、相互比較検討を行った。その結果、最近血管平滑筋細胞の分化誘導に重要なmiRNAとして注目されているmiR-145が、ヒトES細胞由来血管内皮および平滑筋細胞の分化誘導過程において、特徴的な発現変化を示すことを見いだした。即ち、ヒトES細胞由来平滑筋細胞系では著明なmiR-145発現が認められるのに対し、同内皮細胞系では全くその発現を認めず、ヒトES細胞からの血管細胞誘導におけるmiR-145の重要性が示唆された。(2)多能性幹細胞由来血管前駆細胞の効率的血管構成細胞分化誘導法の確立上記(1)の解析から、miR-145がES細胞からの血管平滑筋細胞誘導に有用な因子である可能性が示唆されたことから、その詳細な検討を行った。即ち、ヒトES細胞由来平滑筋細胞にmiR-145の前駆体であるpre-miR-145を導入した場合の平滑筋分化を、各種血管平滑筋マーカー(calponin, caldesmon, SM-MHC)発現、細胞増殖性(MTTアッセイ)、細胞収縮性(カルバコール)により評価した。miR-145はES細胞由来平滑筋細胞において、大動脈血管平滑筋細胞と同等の強い発現を認めた。各種平滑筋マーカー発現は、ES由来平滑筋細胞においてmiR-145導入によりその発現増強を認めた。また、同細胞における細胞増殖性はmiR-145導入により低下し、収縮性に関しては逆に亢進を認めた。逆に、ヒトES細胞由来血管内皮細胞において、pre-miR-145を過剰発現させても、内皮機能に変化はなかった。以上から、ES細胞由来平滑筋細胞分化において、miR-145はその誘導をより促進させる重要な因子であることが示された。本研究で得られた知見は、今後のES細胞からの効率的な血管構成細胞分化誘導法の確立につなげていきたい。
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