アディポネクチンの肺癌肺転移抑制効果を検証するため、ヌードマウス肺癌肺転移モデルを利用した。まず、我々は肺癌肺転移モデルを確立させた。肺癌細胞にはGFPタンパクもしくはDsRedタンパクを発現したA549ヒト非小細胞肺がん細胞株を用いた。ヌードマウスにはCD1-Foxn1nu/nuマウスを用いた。ヌードマウスの尾静脈より標識A549細胞を注射し、肺癌肺転移モデルを作成した。それらマウスから肺を取り出し、肺組織中に存在するGFPもしくはDsRed発現A549細胞を蛍光顕微鏡で観察した。また、マクロでは、蛍光実体顕微鏡を用いて、マウスの肺に含まれる肺癌転移巣を同定・評価した。 上記の肺癌肺転移モデルのヌードマウスに、アディポネクチンを尾静脈注射で投与した。プラセボ群にはBSAを含有した生理食塩水を投与した。アディポネクチンの投与方法は、肺癌を尾静脈注射した1週後に連日投与して最大14日間の投与を行う方法を用いた。アディポネクチンの最終投与1週後に、ヌードマウスから肺実質・組織を取り出し、その中に含まれている肺転移病巣の個数を、前述の方法(マクロ・ミクロ)で比較・評価した。その結果、アディポネクチン投与群とプラセボ群とでは、ミクロ・マクロの双方において、肺癌肺転移の個数に有意差を認めなかった。 今回我々が行った研究では、ヌードマウス肺癌肺転移モデルを用いたアディポネクチンの転移抑制効果は証明されなかった。我々が用いた肺転移モデルでは転移抑制効果が認められなかったものの、前年度のヌードマウス肺癌皮下移植モデルを用いた実験ではアディポネクチンの抗腫瘍効果が確認された。実験条件の違いで結果が異なった可能性が考えられた。我々が用いた肺癌肺転移モデルの条件などを見直し、アディポネクチンの転移抑制効果を再検証していくことが今後の課題となった。
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