研究概要 |
研究代表者はこれまでにヒトに類似した分泌様式を持つブタ気管を用いた研究によって、気道の生理的な水・電解質分泌に対する内因性の調節因子として最も強力なものがアセチルコリン(ACh)であることを示してきた。しかし、外来病原体に排除に対して行われる追加分泌および種々の慢性気道炎症疾患における病態増悪因子としての過分泌が単にAChの分泌過多によって生じるものではないことも、分泌腺細胞の脱感作という現象を示し証明してきた。本研究によって、未知の外的調節因子の一つとしてTLRsが機能し得ることを明らかにしつつある。すなわちグラム陽性菌由来のPGN、グラム陰性菌由来のLPSおよびウイルス由来のpoly(I:C)を用いて、それぞれの認識受容体であるTLR2、TLR4およびTLR3のシグナリングが気道分泌腺にどのような影響をもたらすのかを検討し、このうちではTLR4のみが強く関与していること、およびその効果が細胞内NO合成酵素阻害剤(L-NAME,L-NMMA)や細胞内PKG阻害剤であるKT-5823およびRp-8Br-cGMPの投与によって消失することからNO/cGMP/PKG系が深く関与していることを明らかにしてきた。NOの合成酵素のサブタイプに関しては、iNOSの阻害剤である1400WもL-NILも影響を及ぼさず、nNOSの関与が強く示唆された。今年度はLPSが実際に細胞内NOの合成を促進するのかどうか、細胞内NO特異的蛍光色素であるDAF2-DAを用いた検討を行いLPSには即時的なNO合成促進作用があることまたその効果はTLR4との結合阻害剤の存在下では認められなくなることを明らかにした。これは気道粘膜下腺においてTLR4シグナルがLPSによって活性化された場合、従来知られていたものとは別の即時的な経路(本研究によってNO/cGMP/PKG系であることが示されている)によって追加分泌を惹起し得ることを意味する。気道粘膜下腺細胞におけるTRL4の発現は蛍光免疫染色法およびRT-PCR法によってそれぞれ蛋白レベルおよびmRNAレベルで証明した。これらの結果をまとめて、Toll like receptor 4 potentiates Ca^<2+> dependent electrolyte secretion from swine tracheal glandsという論文タイトルで米国呼吸器学会誌に英文で報告した。
|