研究課題
若手研究(B)
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブおよびエルロチニブは、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌(NSCLC)に奏効性が高い。しかし、奏効例もほぼ例外なく1~数年以内に耐性を獲得し再燃することが次なる問題となっている。宿主の間質細胞は癌細胞の機能を修飾することが知られているが、癌細胞の分子標的薬感受性に及ぼす影響はほとんど明らかにされていない。そこで、本研究ではEGFR 遺伝子変異を有する肺癌細胞のEGFR-TKI感受性における間質細胞が果たす役割を検討した。EGFR遺伝子変異(Exon 19の欠失)を有する肺癌細胞株(PC-9、HCC827)と線維芽細胞を共培養し、in vitroにおけるゲフィチニブ感受性をMTT法で検討した。またin vivoにおける検討として、PC-9と線維芽細胞をあらかじめ混ぜた後にSCIDマウスの皮下に移植し、4日後からゲフィチニブを連日経口投与し治療効果を評価した。HGF産生はELISA法で測定した。線維芽細胞の遊走能はダブルチャンバー法で検討した。線維芽細胞株および肺癌患者の腫瘍組織から樹立した初代培養線維芽細胞は種々の濃度のHGF(hepatocyte growth factor)を産生した。肺癌細胞株は線維芽細胞の遊走を著明に誘導した。肺癌細胞株PC-9とHCC827はゲフィチニブに高い感受性を示したが、線維芽細胞と共培養することで耐性となった。線維芽細胞によるゲフィチニブ耐性は、抗HGF中和抗体やNK4(HGFの受容体結合阻害物質)により解除された。さらに、PC-9の皮下腫瘍はゲフィチニブ治療に高い感受性を示したが、線維芽細胞をあらかじめ混ぜて接種するとゲフィチニブ治療によっても縮小せず、耐性化がみられた。しかし、抗HGF中和抗体やNK4を併用することで耐性は解除され、腫瘍は著明に縮小した。以上より、線維芽細胞は肺癌細胞により腫瘍局所にリクルートされ種々の濃度のHGFを産生するが、HGFを高産生する場合にはEGFR遺伝子変異を有する肺癌細胞のEGFR-TKI耐性を誘導することが明らかとなった。宿主間質細胞との相互作用は癌細胞のEGFR-TKI感受性において非常に重要な役割を果たしており、耐性克服の治療標的となることが示唆された。
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Clin Cancer Res(Epub ahead of print)
Clin Cancer Res 16
ページ: 174-83
Clin Cancer Res. 15(21)
ページ: 6630-6638
http://syuyounaika.w3.kanazawa-u.ac.jp/