研究概要 |
近年,哺乳類の視交叉上核に約24時間の周期を刻む体内時計の存在が確認された.時計遺伝子に視交叉上核に発現する中枢時計遺伝子と,末梢組織に発現する末梢時計遺伝子とがあり,末梢時計遺伝子の一部は発生,肥満,循環器疾患,精神疾患,腫瘍などに関与することが既に報告されている.しかし,時計遺伝子における研究は端緒についたばかりであり,とくにヒトにおける解析は十分とは言えず,各疾患におけるこれらの遺伝子の役割は不明な点が多い.今回,呼吸器疾患における時計遺伝子の分子生物学的機能を解明するために研究を進めた.時計遺伝子研究により病態の新たな知見が得られれば,新たな治療法の開発に結び付く可能性もあると考えている. 平成21年度は,主に肺癌培養細胞株からの時計遺伝子mRNAの抽出を行った.当科の所有する各種培養細胞株においてmRNAを抽出し,RT-PCRの条件設定を行った.引き続きタンパク解析のためにWestern blot法を試みたが,結果が一定して得られす細胞間の比較は困難であった.手技的な問題か,抗体等の問題かは不明であるが,新たな適当な抗体の入手が難しくWestern blot法による解析は断念した.よって,本研究ではmRNAを主体に解析を行っていく方針とした. また,次年度に計画している臨床検体での解析の準備として,当院において肺切除術を受けられた肺癌患者様より手術検体を提供して頂き,サンプル収集を行った. その他の呼吸器疾患として,間質性肺炎における解析も計画している.間質性肺炎に対する検討については,平成21年度は適切な外科的肺生検症例がなく現時点では検体の収集ができていない.
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