本研究の目的は、肺線維症で増加した肺筋線維芽細胞でのHSP47の発現を、アンチセンス法より少量で強力に遺伝子をノックダウンできるsiRNAを用いた遺伝子ノックアウト法を用いて抑制し、肺線維症動物モデルを用いて肺線維化抑制効果を確認することである。さらに、標的細胞である肺筋線維芽細胞の細胞特異性を利用し、特異的にsiRNAを導入するためのドラッグデリバリーシステムを確立することである。昨年度は、ラットブレオマイシン肺線維症モデルを作成し、経静脈的にVitaminAを混じたリポソームで封入したHSP47siRNAを投与し、肺線維化抑制効果を確認した。本年度は、その線維化抑制、炎症抑制メカニズムの検討を行った。ブレオマイシン投与2週間後よりHSP47siRNAを3週間投与した。投与により線維化の進行が抑制され、治療効果も確認できた。さらに本モデルでは、肺組織中のIL-1β、肺胞洗浄液中のTGF-β1の産生抑制が見られ、サイトカイン産生抑制も確認した。また、HSP47siRNA投与により、線維化病巣のアポトーシス細胞が増加しており、筋線維芽細胞のアポトーシス誘導も示唆された。以上の結果より、本ドラッグデリバリーシステムによるHSP47siRNA投与は、肺線維化抑制効果があり、そのメカニズムとして直接的なコラーゲン線維産生抑制だけではなく、サイトカイン産生抑制、筋線維芽細胞のアポトーシス誘導が関与していることが明らかとなった。
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