研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界的にみて罹患率と死亡率の高い疾患であり、急性増悪はその病態進行のみならず増悪時の入院費増大など社会的負荷の観点からもその制御が重要である。増悪因子のひとつとしてウイルス感染が考えられるがウイルス感染によるCOPD急性増悪の機序は未だ不明である。近年、ウイルス感染時に産生される1本鎖および2本鎖RNAがtoll-like受容体を介することで炎症を惹起する報告が散見される。本研究では、toll-like受容体を介した好中球活性化機序がCOPD急性増悪の病態に重要であると考え、次の4点に着目し検討する。1)COPDの病態で重要な酸化ストレスによる好中球のTLR8シグナル経路の活性化2)酸化ストレスによるNF-kB系の増強メカニズムの検討3)健常者およびCOPD群におけるTLR8受容体刺激に対しての免疫応答性の比較4)増悪時におけるTLR8受容体刺激反応性について検討する。 1)2)についての検討 本検討は、すでに完了し、酸化ストレスによりNF-kB経路が増強することでTLR8のシグナルが活性化することを英文誌に発表した。(Yanagisawa S, Koarai A et al. Respir Res 2009) 3)についての検討 COPD患者の末梢血好中球を用いてTLR8リガンド刺激によるIL-8などのサイトカインおよびケモカイン産生能を調べ、健常者と比較した。COPDでは健常者に比しIL-8産生能が亢進する傾向が認められたが、年齢マッチングによるさらなる検討が必要である。 4)についての検討 増悪時に末梢血好中球を分離しTLR8リガンド刺激によるIL-8産生能が安静時と比べ増強する否かに関し検討を試みたが、少数例での検討にとどまり、さらなる症例の蓄積が必要である。
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