好中球性炎症は難治性喘息の一つの特徴であり、Th17細胞から産生されるIL-17はIL-8などの産生を介して好中球性炎症を誘導する。またドーパミンD1受容体拮抗薬は、Th17型免疫応答を抑制する。 本年度はマウス好中球性気道炎症モデルを用い、ドーパミンD1受容体拮抗薬の好中球性炎症に対する効果を検討した。好中球性気道炎症はOVAを認識するT細胞抗原レセプターのトランスジェニックマウスであるDO11.10マウスに、OVAを吸入させることで誘導する。この好中球性炎症はKLHなどの他の抗原吸入では誘導されず、IL-17遺伝子欠損マウスでも誘導されない。すなわちIL-17に依存した抗原特異的好中球性炎症モデルと考えられる。第-2日及び第0日にDO11.10マウスを3%OVAまたはPBSで吸入し、第1日に解析した。マウスの一部は、第-6週-0週の間、週3回ドーパミンD1受容体拮抗薬(SCH23390)の経胃管投与を受けた。SCH23390は、DO11.10マウスにおけるOVA吸入で誘導される好中球性気道炎症を抑制した。SCH23390は、肺におけるIL-17濃度を抑制し、IL-23R陽性Th17細胞の肺への浸潤を抑制した。細胞内染色での検討では、肺におけるIL-17産生CD4陽性細胞(Th17細胞)数を減少させたが、Foxp3陽性CD4陽性調節性T細胞の数は変化させなかった。さらにSCH23390は、肺CD11c陽性抗原提示細胞からのIL-23産生を抑制した。これらの結果から、ドーパミンD1受容体拮抗薬は肺抗原提示細胞からのIL-23産生を抑制し、肺におけるTh17型免疫応答を抑制することで、好中球性気道炎症を抑制すると考えられた。従って、ドーパミンD1受容体拮抗薬は、好中球優位の重症喘息において有望な治療戦略となる可能性が示唆された。
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