喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態に、オートファジーによる細胞内蛋白質分解系が細胞老化制御の点から関与する可能性を明らかにするため、気道上皮細胞培養系を用いた検討を行った。cigarette smoke extract(CSE)は気道上皮細胞においてオートファジーの亢進(LC3-EGFを安定高発現させた細胞でのdot形成及びLC3-II蛋白発現)と細胞老化を誘導した(老化関連β-gal発現量及びp21発現)。またオートファジーの阻害剤(3MA)やLC3に対するsiRNAを用いた機能抑制が喫煙刺激による細胞老化をさらに亢進させ、一方オートファジーの機能促進作用のある薬剤(Torin1)は細胞老化を抑制した。オートファジー機能と細胞老化との関連を明らかにする目的で4-HNE、ニトロチロシン残基、及びユビキチン化たんぱく質など傷害または分解処理されるべきたんぱく質の細胞内蓄積の検討を行った。その結果オートファジー機能を抑制することが、喫煙によるユビキチン化たんぱく質の細胞内蓄積を亢進させることが明らかとなった。さらにp21に対するsiRNAを用いた検討では喫煙及びオートファジーを介する細胞老化亢進にp21の発現が重要である事が示された。またTGF-β刺激がオートファジー機能亢進と細胞老化を誘導することも明らかとなり、CSEの作用がTGF-β活性化を介しているかに関しても検討中である。 本検討により喫煙刺激による気道上皮細胞の老化亢進に、オートファジー機能低下によるユビキチン化たんぱく質蓄積が関与する可能性が示唆された。細胞老化の亢進はSenescence associated secretory phenotypeとして知られるサイトカインの過剰分泌によりCOPDの病態に関与する可能性があり、今回の検討結果はその機序解明の手がかりの一つと考えている。
|