オートファジーによる細胞内蛋白質分解系が、細胞老化制御によりCOPDの病態に関与する可能性を明らかにするため、気道上皮細胞培養系及び肺組織を用いた検討を行った。 昨年度はcigarette smoke extract (CSE)による気道上皮細胞老化亢進に対しオートファジーが抑制的に働いていることを見出した。今年度は、ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジーを結びつけるp62の関与の点から、さらに検討を行った。CSEによって細胞老化が誘導される際にユビキチン化蛋白とp62が蓄積し、LC3に対するsiRNAや、bafilomycin Aでオートファジーを抑制することによりこれらの蓄積はさらに増加した。逆にTorinlにより亢進させることにより、蓄積は低下した。ユビキチン化蛋白とp62の細胞内蓄積は免疫蛍光染色により確認した。Mitotracker及びTOM20による蛍光染色から、CSEがミトコンドリアの傷害と蓄積を誘導していた。つまりオートファジーによるp62とユビキチンを介した傷害ミトコンドリアの処理機構が、COPD病態で重要である可能性が示唆された。臨床的な重要性を明らかにする目的で、COPD患者由来の気道上皮細胞及び肺組織を用いて検討した。COPD患者由来の気道上皮細胞はベースラインでのオートファジーが亢進しており、一方CSE刺激によるオートファジーの誘導が、非COPD患者由来の気道上皮細胞と比べて著明に低下していた。COPD患者由来の肺組織から抽出した蛋白質の検討では、p62の蓄積が明らかとなった。本検討により喫煙刺激による気道上皮細胞の老化亢進に、オートファジー機能低下によるp62を介したユビキチン化蛋白質の分解低下が関与する可能性が示された。オートファジーの理解が、これら傷害蛋白の分解制御の点から、有効なCOPD治療法の開発の上で重要な手がかりの一つとなると考えられた。
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