研究概要 |
肺癌細胞株を用いて、L-type amino acid transpoter 1 (LAT1)の発現をRT-PCRにて測定した。その中で発現の高い細胞株に対して、L-type amino acid inhibitorであるBCHを投与して、MTT assayとmigration assayを行った。結果は濃度依存性に肺癌細胞株の増殖が抑制された。さらに、肺癌の治療薬であるgefitinibとBCHを併用することにより相加・相乗効果も認められた。Gefitinibは、EGFRmutationをもつ症例に効果を認めることは既に報告されているが、LAT1発現はEGFR mutationをもたないwild typeに有意に発現が高いことをヒト肺癌標本による検討で今回示した。そのため、gefitinibが効きにくいEGFR wild typeにLAT1発現が高い傾向があるため、gefitinibとLAT1 inhibitorの併用は肺癌治療において有用な可能性が示唆された。 LAT1発現は、アミノ酸産生にかかわるAKT/mTOR signaling pathwayに関与が予想されるが、今回シグナル伝達についても検討した。肺癌細胞株に対してBCHでLAT1を阻害したところ、mTOR,pS6のシグナルが抑制された。PreliminaryではあるがmTORとLAT1発現の関与が示唆された。今後は、さらに詳細な検討が必要であり、ヒト肺癌切除標本にてシグナル伝達について現在検討中である。mTORの関与を明らかにすることで、mTOR阻害剤とLAT1発現との関係を検討して、将来的にはmTOR阻害剤とLAT1阻害剤との併用の有用性やmTOR阻害剤がLAT1発現をどのように阻害するかどうかも検討していきたい。 LAT1は、我々が開発したL-「3-^<18>F」-α-methyl tyrosine (FAMT)-PETが取り込まれるtransporterであるが、LAT1発現だけではなく、^<18>F-FAMTの肺癌への集積が予後に関与するかどうかについても検討した。FDG-PETに比べて肺腺癌については、FAMT-PETのほうが予後に強く相関することを今回示した。今後は、LAT1阻害剤を肺癌症例に治療した時の治療効果予測の手段として、FAMT-PETが有用なことも証明していく予定である。
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