研究課題/領域番号 |
21790794
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
臼井 丈一 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70447340)
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キーワード | 腎臓学 / 再生医学 / 幹細胞 / 腎移植 / 腎臓発生 / 糸球体腎炎 |
研究概要 |
iPS細胞を含む幹細胞医療の臨床実現化を念頭に置いた際に、発達臓器の分化制御プロセスを詳細に解析し、幹細胞の再生プロセスに応用することは重点課題である。本研究では、腎臓の幹細胞や発生システムを解明することにより、腎臓移植医療という臨床実現化を長期的な目標とした恒久的なドナー臓器の作成方法の開発を行う。腎臓再生に幹細胞システムを活用し、幹細胞を用いたドナー腎臓作成方法に留まらず、幹細胞システム評価のためのクローナルなin vitro、in vivoでの腎臓分化のアッセイ系の確立を目指し研究を継続的に遂行している。 (1)多能性幹細胞(Es細胞・iPS細胞)を用いたキメラ腎臓の作成(in vivo実験): Es細胞、iPS細胞と腎臓欠損マウスとの間でキメラマウスを作成することによる幹細胞由来の新たなキメラ腎臓の作製法に成功した。本研究成果は国内外で高い評価を受け、論文は本年度Am J Patholにacceptされた。さらに、このキメラ腎臓アッセイを活用した発達腎臓メカニズムの解析を実施している(平成24年度学会発表予定)。また、腎臓以外の他臓器では、同様の実験手法を用いたキメラ膵臓の作成に成功し、すでに論文発表している(Cell 2010)。 (2)In vitroマウス腎臓分化アッセイ系の開発と腎臓幹細胞の純化法の確立(in vitro実験): 腎臓発生に必須な分子であるwnt4蛋白過剰発現フィーダー細胞との共培養でのコロニーアッセイを行い、幹細胞・前駆細胞活性のある細胞群を判定するin vitroアッセイ系の再現にも成功している。現在、フローサイトメトリーとモノクローナル抗体ライブラリーを用いマウス胎仔腎臓における表面抗原の網羅的発現解析を行い、この解析成果を元に細胞の選別を行い、確立したアッセイ系を用い幹細胞・前駆細胞活性のある細胞集団を判定している。 (3)幹細胞学研究の腎臓病学および腎臓幹細胞研究の他分野への応用: 腎臓幹細胞や腎臓発生メカニズムの知見を元にヒト腎臓病の発症メカニズムへの応用研究を進めている。現在、腎臓発生に重要なある転写因子がヒト糸球体腎炎の糸球体構成細胞に発現増強することを確認している。この発現解析を軸に、腎臓発生とヒト腎炎の発症・進展のメカニズムへの関連性の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のプロジェクトを同時に進めているが、いずれもおおむね順調に進展している。特に、ES細胞、iPS細胞による臓器作成実験はすでに複数の臓器(腎臓、膵臓)で成功し、論文化されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、より効率の良い腎臓作製法の開発、発達腎臓のin vivo、in vitroアッセイ系の確立を目的とし研究全体を遂行する予定である。具体的には、iPS細胞由来腎臓を用いた腎臓発達メカニズムの解析やin vitroアッセイ系を用いた腎臓幹細胞の純化方法の確立に関して、国内外の学会発表および英文論文の投稿準備を進める。大型動物への応用に関しては、ブタ腎臓特異的遺伝子の発現解析、クローニングを進めており、学会発表および英文論文の投稿を予定している。その他、腎臓発生メカニズムの研究成果をヒントに、ヒト腎臓病発症メカニズム解明(発生腎臓に重要なある転写因子のメサンギウム増殖性糸球体腎炎への関与)の研究へ展開している。
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