研究課題
ICUにおいて敗血症は頻繁に発生し、しかも医療技術の進歩にもかかわらず依然として死に至る重篤な病態である。とりわけ敗血症による急性腎不全(acute kidney injury ; AKI)を合併するとその死亡率はきわめて高くなることが知られており、敗血症の診療において腎機能障害を早期に検出し腎不全を回避すべく治療を開始することは、敗血症の予後を改善するうえで極めて重要である。新規AKIバイオマーカーにより早期かつ正確な敗血症および敗血症性AKIの診断が可能となれば、敗血症の治療成績の改善のみならず、抗菌薬、昇圧薬以外の敗血症に対する新規薬剤の開発が期待できる。近年、研究代表者のグループは、ヒトおよび動物モデルにおいて尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-type fatty acid binding protein ; L-FABP)が腎移植や心臓手術に関連した虚血性腎障害、シスプラチン、NSAIDsなどの薬剤による腎障害を鋭敏に検出できることを報告してきた。腎臓に対する虚血・低酸素ストレスに対して近位尿細管におけるL-FABPの発現が亢進し尿中に放出されることが主なメカニズムであると想定されている。本研究では、ヒトL-FABPトランスジェニックマウスに対して盲腸結紮穿刺腹膜炎モデル、LPS気管内投与モデルを作成して敗血症を惹起、尿中L-FABP濃度の経時的変化を測定することで、敗血症というさらに複雑な病態においても尿中L-FABPがAKIの早期診断バイオマーカーとして有用であることを証明した。さらに、敗血症性ショックによるAKIを来したICU症例における尿L-FABP濃度を測定し、ヒトにおいても尿中L-FABPの有用性を確認した。
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Critical Care Medicine
巻: 38 ページ: 2037-2042
Current Opinion Critical Care.
巻: 16 ページ: 545-549