【研究1】「代謝障害に伴う高血圧における脳内酸化ストレス・交感神経活動亢進」【方法】2型糖尿病の先天的疾患モデル動物であるWistar fatty ratと、その対照動物であるWistar lean ratに対し以下の検討を行い、両群で比較した。13~14週齢の雄性ラットの体重、血圧、糖代謝、尿中ノルエピネフリンを評価した。脳内酸化ストレスを介した交感神経活動亢進の有無を検討するため、ウレタン麻酔・人工呼吸下に側脳室内に抗酸化剤tempolを投与した際の、血圧・心拍数・腎交感神経活動の反応を評価し、さらに摘出した視床下部における酸化ストレスをルシジェニン化学蛍光発光法により測定した。【成績】Fatty ratは肥満・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常とメタボリックシンドロームを呈していた。Fatty ratでは尿中ノルエピネフリン値が有意に高値で、ヘキサメソニウム静脈投与に対する血圧降下反応が有意に増大しており、交感神経活動亢進が示唆された。抗酸化剤tempolの側脳室投与により、血圧・心拍数・腎交感神経活動は低下反応を示し、その低下率はfatty ratにおいてlean ratに比較し有意に大きかった。またfatty ratの視床下部における酸化ストレスも高値であった。【結論】メタボリックシンドロームの病態において、脳内酸化ストレスを介した中枢性交感神経活動亢進が昇圧機序に関与している可能性が考えられた。【研究2】「CKDに伴う高血圧における脳内酸化ストレス・交感神経活動亢進」3週齢という幼若SDラットに片腎摘出術を施し高食塩食を4週間負荷しCKDモデルを作成した。研究1と同様の手法により、CKDラットにおいても脳内酸化ストレス増大、交感神経活動亢進が示された。詳細について検討中である。【意義・重要性】代謝障害とCKDの共通背景として脳内酸化ストレスを介した交感神経活動亢進の関与を証明しつつある。抗酸化作用を有する薬剤による中枢性の交感神経抑制が、腎機能障害を含めた心血管合併症の新たな治療戦略となり得る。
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