【研究1】「代謝障害に伴う高血圧における脳内酸化ストレス・交感神経活動亢進」肥満高血圧モデルにおいて、脳内酸化ストレスを介した中枢性交感神経活動亢進を起こしている更なる詳細機序として、脳内アルドステロン、ミネラロコルチコイド受容体の関与について検討を行った。4週齢Sprague-Dawleyラットに、6週間、45%高脂肪食を負荷すると同時に、アルドステロン合成阻害薬であるFAD286や、ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬であるエプレレノンをイシフュージョンポンプにて慢性的に脳室内に投与した。、その結果、人工脳脊髄液を脳室内投与したvehicle群と比較し、FAD群やエプレレノン群では、脳内酸化ストレスの減少、交感神経活動の低下、血圧低下、が認められ、脳内アルドステロン-ミネラロコルチコイド受容体が、脳内酸化ストレスを介した中枢性交感神経活動亢進を起こしている可能性が考えられた。現在例数を重ねて検討中である。 【研究2】「CKDに伴う高血圧における脳内酸化ストレス・交感神経活動亢進」3週齢という幼若SDラットに片腎摘出術を施し高食塩食を4週間負荷しCKDモデルを作成した。コントロール群(偽手術および高食塩食群、片腎摘出および普通食群、偽手術および普通食群)と比較し、CKDモデルでは脳内酸化ストレス上昇を介した中枢性交感神経活動亢進が認められた。すなわち、脳室内に抗酸化薬tempolを急性投与した際の血圧・腎交感神経活動の低下反応がCKD群で有意に大きく、さらにルシジェニン化学蛍光発光法で測定した視床下部酸化ストレスが有意に増大していた。さらに、CKD群に、慢性的に脳室内にtempolを投与し脳内抗酸化治療を行った群、また中枢性交感神経抑制薬であるモキソニジンを経口投与した群では、交感神経抑制を介した降圧ならびに腎障害の改善が認められた。この研究2の成果については、Hypertension誌に報告した。 【意義・重要性】代謝障害とCKDの共通背景として脳内酸化ストレスを介した交感神経活動亢進の関与を証明し得た。さらには、中枢性の抗酸化作用による交感神経抑制効果により、降圧のみならず、臓器障害を抑制する効果を示すことができた。交感神経をターゲットとした降圧療法の発展に貢献できると考える。
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