研究概要 |
雄WistarラットにAngII(400ng/kgBW/min)を浸透圧ポンプを用いて14日間投与し、fasudil : ROCK阻害薬(20mg/kgBW)と、gefitinib : EGFR阻害薬(3mg/kgBW)の腎病変に及ぼす効果を調べた。 AngII投与によりmyosin light chain(MLC)-Ser^<19>と、EGFR-Tyr^<1068>リン酸化は増加したことより、ROCKとEGFRは腎内で活性化したと考えられる。AngIIはcontrol群に比し、収縮期血圧(220.3±18.7mmHg)、尿蛋白排泄量(118.0±19.0mg/day)、糸球体における細胞増殖(PCNA 46.8±4.3, Ki675.5±1.3)を有意に増加させた。また糸球体におけるp27陽性細胞数(30.4±1.8)は減少し、AngIIによる細胞増殖刺激の一部はp27抑制を介することが示唆された。ポドシンとネフリンの染色ペターンは正常糸球体においては一致している。しかし、AngII投与により両者の発現分布は乖離することから、AngIIによる蛋白尿発現はスリット膜機能不全を介しているものと推察された。 fasudilおよびgefitinib投与により血圧は変化しないものの、MLCとEGERリン酸化は有意に抑制したことより、両薬剤はキナーゼ活性化を腎内にて有効に抑制した。fasudilは尿蛋白排泄量を有意に減少(57.2±17.5mg/day)させ、細胞増殖(PCNA 29.9±2.3, Ki67 2.7±0.5)とp27発現抑制について完全に抑制した(33.1±2.6)。一方、gefitinibは細胞増殖(PCNA 25.2±6.4. Ki67 0.4±0.5)とp27発現抑制については完全に抑制した(35.2±1.0)が、尿蛋白排泄量を変化させなかった(133.3±30.9mg/day)。AngIIによるネフリンとポドシンの発現乖離は、fasudilによって回復したがgefitinibには効果がなかった。これらの結果から1. AngIIは腎内においてROCKとEGFRを活性化する2. AngIIのよるROCK活性化細胞増殖と蛋白尿発現に関与する3. AngIIによるEGFR活性化は細胞増殖には関与するが、蛋白尿発現には関与しないことが明らかとなった。今後は、これらと尿中アンジオテンジノーゲンの変化との関連を検討する予定である。
|