研究概要 |
本研究の目的は、加齢に伴う糸球体硬化のメカニズムを解明することである。我々は、「加齢とともに蓄積する終末糖化産物(AGE)により糸球体硬化が進行する」という仮説をたて、AGEで誘導され、糸球体硬化を制御する転写因子としてSmad1を同定した。本研究では硬化制御因子Smad1による加齢性腎障害の検討の前段階として、Smad1の修飾因子を同定し、各種糸球体疾患に及ぼす役割を検討した。まず、Smadlのリン酸化を促進する細胞内分子としてsrcを同定し、増殖性腎炎における役割を証明した(PLoS One,2011)。次に、糖尿病の環境下でSmad1をリン酸化する分泌蛋白としてBone morphogenetic protein 4(BMP4)を同定し、BMP4の強発現マウスでは糖尿病性腎症に酷似した糸球体病変を来すことを証明した(JBC,2011)。現在糖尿病モデルマウスでBMP4を阻害することで糸球体病変が改善する知見も得られており近日発表予定である。 加齢に伴う糸球体障害には糸球体構成細胞の一つメサンギウム細胞の形質変化も重要である。メサンギウム細胞の形質変化にはBasic helix-loop-helix(bHLH)の関与が知られているので、メサンギウム細胞で発現しているbHLHの一つE2Aの結合蛋白を網羅的に検索し、老化関連因子PIASyを同定した。よって本研究ではPIASyのメサンギウム細胞における役割を検討した。その結果、PIASyはE2Aと結合することによってE2AのSUMO化を促進し、メサンギウム細胞の形質変化を負の方向に制御することが証明された(近日論文発表予定)。以上の所見よりsrc,BMP4,PIASyの制御が加齢関連腎障害にも関与している可能性が示唆された。今後は、上記知見をふまえて加齢モデルマウスで各種分子の発現を検討する予定である。
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